ジョーライン 〜SNSアイドルへの道〜

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テネシー州の田舎町、16歳のオースティン・テスターはインターネット上でスターになることを夢見て、ライブ配信ビジネスの世界に入り込もうと投稿を始める。

世界中で10代の女の子たちが、まるで21世紀版のアイドル雑誌を読み漁るように、インターネットでオースティンのような「アイドル配信」を視聴している。オンライン配信では推しアイドルと1、2分、もっと見たければ適当な課金を支払って交流することができる。その中でも、オースティンのライブ配信は一風変わっていた。ラップトップのカメラを真剣に見つめ、ファンたちに向けて何時間でもポジティブなメッセージを送り続ける。彼はそのアイドルらしい振る舞いを売りにし、見返りに名声を得て、家族の生活を支えたいと考えていた。

ショッピングモールでのオフ交流会でも本格的なファンミーティングのイベントでも、推しアイドルとハグやキスをするチャンスを得るためなら女の子たちは金を惜しまない。リザ・マンデルップ監督は、この経済システムを操る10代の手配師の台頭と、彼らのビジネス、物語性、成功と挫折を経験する様子に焦点を当て、あえて判断を下さない自由な視点を観客に提供している。また、名声に飢えた出世欲の対比として、女の子たちが率直に語る若者の痛々しい現実も捉えている。オースティンはいつも誠実に心温まるメッセージをファンに送るのだが、果たしてそんなポジティブな言葉だけでスターになる夢を実現できるのだろうか。また、虐待を受けた過去と将来のないテネシーの小さな町から抜け出せる日は来るのだろうか。ただし、この新しいビジネス生態系そのものが砂上の楼閣なのかも知れない。

マンデルップ監督のデビュー作「ジョーライン」は、今を生きる若者の姿と、現代のゴールドラッシュと言えるティーンエイジャー中心のビジネス生態系の複雑な関わりをあぶりだす作品となっている。非常に魅力的で感動的ですらある若者たちの人間像を捉えながら、彼らに受け継がれた近代経済の価値観に疑問を投げかけ、新世代の刹那的なアメリカンドリームを描き出す。
マンデルップ監督は、オンライン配信で「永遠の親友」のように親密に交流し合う若者特有の関係性の世界に潜入し、インターネット業界の深淵を描くとともに、若者の愛されたい願望や承認欲求に根差した心の隙間に虚像を生み出す配信ビジネスの仕組みと、搾取の形態をあばき出している。だが、時が経てばこれもひとときの夢なのだろう。